仙台高等裁判所 昭和45年(ラ)63号 決定
〔主文〕原審判を取消す。
抗告人の氏「渡辺」を父の氏「藤枝」に変更することを許可する。
〔理由〕本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載<略>のとおりである。
按ずるに非嫡出子が父の氏を称することは、現行法の下においては父の氏を称するというだけではなく父の戸籍に入ることを意味するものであるところ、一夫一婦制度を建前とする現行法制の下においては、戸籍は夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに編製されるのが原則であつて非嫡出子を同一戸籍に入れることは建前としては例外であり、また非嫡出子の同籍することが嫡出子の婚姻や就職の支障となる場合もあることは現在における社会生活からみて一概に否定し去ることはできないところであるから、本妻その他の同一戸籍者が反対する場合には、特段の事情がない限りその改氏を許すことは相当でないというべきである。
しかしながら本件についてこれをみるに、記録によると抗告人の父と本妻間に二男二女があり、これらの子女がいずれも未婚である関係もあつて本妻が抗告人の改氏入籍に反対の態度を示しているのであるが、しかし、本件の場合には非嫡出子である抗告人が始めて父の氏を称し父の戸籍に入るのではなく、同じく非嫡出子である抗告人の兄実が既に昭和三八年一一月一一日に福島家庭裁判所の許可を得て父の氏を称し嫡出子と同一戸籍に入つている事実があるのみならず、抗告人は今春幼稚園に入園するに当りその同居している父及び兄と同一の氏を称したいというのであつて、抗告人の保護福祉の点からみれば本件改氏の申立も無理からぬものがあるのであるから、かかる特段の事情のある場合には抗告人の父の氏への変更もまたこれを許すのが相当と解すべきである。
そうすると、本件申立を却下した原審判は相当でなく、本件抗告は理由があるから、原審判を取消して本件氏の変更申立を許可することとし、主文のとおり決定する。
(松本晃平 伊藤和男 佐々木泉)